腰痛は骨盤と腰椎カーブが重要
腰痛治療において最も重要なのは、「骨盤が水平」であること、そして「腰椎の生理的前弯カーブを確保」することにあります。
人体は動く構造物として捉えるべきで、骨盤の基底部は建物でいうなら「床」に相当します。我々の生活空間には重力が存在する以上、水平を失った低位側へその上に載る構造物は傾いて行くのが自然の理です。
この床である骨盤が傾くことは、つまり低い側へ腰椎(脊柱)が同側へ傾斜していくことを意味します。しかし頭部(脳)と脊柱を身体の正中線上に保とうとする「補正作用」のおかげで、上半身は倒れきることなく姿勢を保持しています。
このような状況が継続することで脊柱を保持している脊柱起立筋や骨盤周辺の筋肉群が痛みというシグナルを発して知らせようとします。これが腰に起きた場合に腰痛として認識します。
また重要な点は、「骨盤の歪み」から「二次的に腰椎の歪み」が引き起こり、その歪みを継続的に保持することで「筋肉に負担」をかけているという「つながり(連動性)」を認識することです。
腰痛のタイプ
骨盤構造と脊柱の歪み、それを支える筋肉群の関係で腰痛は引き起こりますが、以下のようなタイプが存在します。(ただし、悪性腫瘍や内蔵疾患による腰痛は対象外となります。)
(イラスト A:仙腸関節 B:腰仙関節 C:椎間関節)
- 腰椎の連結部分である「椎間関節」の歪みによる痛み
- 仙骨と腰椎で連結する「腰仙関節」の歪みによる痛み
- 腰椎間のクッションとなる「椎間板」突出や圧迫による痛み
- 骨盤を形成する「仙腸関節」の歪みによる痛み
- 腰椎・骨盤周辺の「筋肉疲労や筋膜損傷」による痛み
上記の分類によって、痛みを発生する組織としては、筋肉、筋膜、腱、靭帯などがあり、これらの組織には痛みを感受する神経がはりめぐられているため組織の異常を感受した神経は興奮し痛みが発生します。また神経の根元に障害を起こして直接痛みを発生するケースもあります。
関節や筋肉の動きの中で再現する痛みや同一姿勢を継続し持久力の限界点で現す痛みなど、骨格構造的な問題が起因する痛みであるなら「骨盤矯正」によって改善が可能です。
椎間関節タイプ
脊椎と脊椎を連結する部位での歪みと可動制限によって痛みが現れます。そのほとんどが、動きの中で痛みを現す特徴があります。骨盤の水平化と椎間関節の修復、並びに可動域の回復を考慮したアジャストメントが必要です。
腰仙関節タイプ
脊柱の中で最も弱い連結部です。時に脊椎すべり症などの問題を起こすこともあります。骨盤の前傾角度、つまり腰仙角(腰椎第5-仙骨の基底部の角度)の回復が重要です。
椎間板タイプ
椎間板の変性により腰椎や骨盤周辺の痛みに加え、臀部や下肢に痛みやシビレ感、冷感、場合によっては筋萎縮が現れます。治療法としては異常のある腰椎の椎骨間の角度やスペースを広げ神経の接触を解放するテクニックを使用します。
仙腸関節タイプ
前傾姿勢や、長時間の座位から立ち上がる際に骨盤後面や臀部に痛みが現れます。これは左右どちらかの仙腸関節の可動域に異常があり体重を支持できない状況にあります。どんなに激痛であっても仙腸関節への正しいアジャストメントで素早く短期間で改善するタイプです。
筋肉疲労タイプ
前傾姿勢や同一姿勢の継続など、一定の時間が経過してから鈍痛や張りを訴えるタイプです。朝より午後、夕方と疲れが溜まるに従ってつらくなります。このタイプも上記同様に骨盤の修正が必要ですが、最も重要なのは姿勢環境の見直しです。
改善する腰痛タイプ
- 同じ姿勢を続けるとつらくなる腰痛
- はじめは軽いが次第に痛くなる腰痛
- 動きはじめや動作の直後に感じる腰痛
- 立ったり座ったりなどの動作中の腰痛
- 前屈み、中腰がつらい腰痛
- 後屈が苦手、後屈に柔軟性のない腰痛
- 身体の傾き、バランスの悪い腰痛
- 片足に体重をかけられない腰痛
- 椎間板に変性のある腰痛
- お尻や足に痛み、シビレを伴う腰痛
- お尻の筋肉が硬く歩行がつらい腰痛
※上記の様な腰痛のほとんどが、骨盤の水平化、腰椎の前弯カーブの回復と維持、姿勢習慣の見直しによって改善します。身体を構造的に診ることが何より重要です。
日常の習慣、環境の見直し
骨盤中央にある仙骨は大変重要で、仙骨を中心とした骨盤の歪みは、筋肉群を硬直させ神経や血管、リンパ節を圧迫するなど痛みと老廃物の排泄に影響します。
重力が存在する以上、骨盤は構造的に背骨の床の存在であり、ここに歪みが存在すると脊柱は正常なバランスを保てず、特に腰椎においては体重加圧により生理的な前湾カーブを保てないため、それに沿って筋繊維も後方へ押し出され腰痛の起因となってしまいます。
- 床であぐらや横座りをする癖
- イスに座ると足を組む癖
- 片側のお尻に体重をかけた座り癖
- 片足に体重をかけて立つ癖
- 机に肘をつき背中を丸める癖
- 鞄などいつも同じ側にかける癖
上記のような癖や習慣が骨盤の歪み、背骨の歪み、骨格の歪みをつくり出す例です。
痛くなってから、思い出したように腹筋や運動をはじめても負担が増すばかりでダメージとなります。
日頃から腰や背骨、姿勢に悪いことは極力避ける努力がとても重要です。
身体を補正しようと起きている筋肉の緊張とその背景を理解せず、単に「コリ」と片付けて押してばかりでは改善しないことに気づくべきです。正しいアジャストメントと習慣の見直しは、歪み、痛み、健康体への回復の手助けとなります。
腰痛とアジャストメント&リリース
ピアーズ(ダブルPI概念)、ガンステット(椎間板による代償作用)、ローガン(仙骨前下方)、マッケンジー(動作分析)、SOT理論(カテゴリー分類)に基づいた検査と治療を行います。
骨盤の歪みタイプを分類・把握したうえで、神経テスト、筋力テスト、動作テストなどを行い、仙腸関節、仙骨基底部、腰椎湾曲の修正を行い、大腰筋、腰方形 筋、外側広筋の緊張とバランスを取り戻します。結果、神経圧迫や刺激の解放、血液循環の回復が望め、症状の解消に多いに貢献します。
(ご注意)悪性腫瘍、骨盤内臓器疾患等が原因の腰痛や痺れは適応外となります。